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#infra·FEATURE·2026.09.24 09:28 · 13 min read

NASのおすすめは用途で決まる:市販NAS・自作NAS・TrueNASの選び方

おすすめのNASは「何を保存し、誰が直すか」で決まります。国内メーカー・NAS専業メーカー・自作NASの比較軸、RAIDと容量の計算、HDDの選び方、用途別の構成を整理しました。

NAS(ネットワークHDD)とは、LANにつないだ複数のパソコンやスマホからファイルを保存・共有できるストレージ専用の機器で、おすすめの1台を決める基準は「何を保存するか」と「誰が管理するか」の2つです。同じ4TBを保存するのでも、家族の写真を二度と失いたくないのか、動画を配信したいのか、社員10人のファイルサーバーにするのかで、選ぶべき製品の種類が変わります。

この記事では、国内メーカー製のNAS、NAS専業メーカーの製品、TrueNASなどで作る自作NASの3つを、価格ではなく機能と運用の軸で比べます。そのうえで、RAIDと使える容量の計算、HDDの選び方(CMRとSMR)、電気代の見積もり方、バックアップとセキュリティの考え方を整理し、用途別の構成例に落とし込みます。価格や型番は変わりやすいので扱わず、購入前に確認すべき項目の形で書いています。

この記事でわかること

  • NASと外付けHDD・クラウドストレージの違いと、NASに向く用途
  • 国内メーカー・NAS専業メーカー・自作NAS(TrueNASなど)の比較軸
  • RAIDの種類ごとに使える容量の計算と、大容量HDDでRAID5を避ける理由
  • NAS用HDDの選び方(CMRとSMR、エラー時の挙動)とSSDの使いどころ
  • 家族の写真、小規模オフィス、ホームラボ、動画配信の4つの用途別構成

NASとは:外付けHDD・クラウドストレージとの違い

NASは、ファイルを置く場所であると同時に、Linuxなどで動く小さなサーバーでもあります。外付けHDDとの違いは、複数の端末から同時に使えることと、ディスクを2台以上束ねて1台の故障に耐えられることです。クラウドストレージとの違いは、容量あたりの費用が買い切りで、回線の速さに縛られずにLANの速度で読み書きできることです。

観点外付けHDDNASクラウドストレージ
同時に使える端末つないだ1台LAN内の複数台インターネット経由で複数台
ディスク故障への備えなしRAIDやミラーで1〜2台の故障に耐える事業者側で冗長化
外出先からの利用不可VPNやメーカーの中継サービスで可能そのまま使える
費用のかかり方買い切り本体とHDDの買い切り+電気代月額・年額
容量の増やし方買い足しHDDの追加・交換プラン変更
読み書きの速さUSBの速度LANの速度(1GbE、2.5GbEなど)回線の速度

NASが向いているのは、写真や動画のように容量が大きく増え続けるデータ、家族や社内で共有するデータ、パソコンやスマホのバックアップの受け皿です。逆に、数十GB程度の書類を複数人で編集するだけなら、クラウドストレージの方が管理の手間がかかりません。NASを買うかどうかは、容量と、LANの速度で扱いたいかどうかで判断します。

3つの選択肢:国内メーカー・NAS専業メーカー・自作NAS

国内メーカー製のNAS(バッファローのLinkStationやTeraStation、アイ・オー・データのLANDISKなど)は、日本語のマニュアルとサポート窓口が強みです。機能はファイル共有とバックアップが中心で、追加できるアプリは限られますが、そのぶん設定項目が少なく、法人向けのモデルには保守サービスが用意されているものもあります。

NAS専業メーカーの製品(SynologyのDSM、QNAPのQTSやQuTS hero、ASUSTORのADM、UGREEN、TerraMasterなど)は、専用のOSにアプリストアが付き、写真の自動アップロード、パソコンのバックアップ、動画配信、仮想マシンやコンテナまで1台で動かせます。スナップショットに対応したファイルシステム(SynologyのBtrfs、QuTS heroのZFSなど)を使えるモデルも多く、機能の幅では最も広い選択肢です。一方で、使える機能はメーカーのOSの方針と更新期間に左右されます。

自作NASは、ミニPCやサーバー用の部品にTrueNAS Community Edition、OpenMediaVault、Unraid(有償ライセンス)などを入れて作ります。ZFSのスナップショットと整合性チェック、ECCメモリ、HBA(ディスクを直接つなぐ拡張カード)など、部品と構成を自分で選べるのが利点です。代わりに、故障時の部品交換から更新の判断まで自分で行います。TrueNASの具体的な構築手順はTrueNAS SCALEでNASを構築するガイドにまとめています。

メーカーによっては、自社の互換性リストにないHDDを使うと警告を出したり、一部の機能を制限したりする方針を取ったことがあります。方針は変わるので、購入前にそのモデルの互換性リストと、他社製HDDの扱いを執筆時点の公式情報で確認してください。HDDを手持ちのものや安い時期にまとめ買いしたもので揃えたい場合、この確認を飛ばすと後で困ります。

比較表:何を基準に選ぶか

3つの選択肢を、購入後の運用で差が出る項目で比べます。

比較の軸国内メーカー製NAS専業メーカー自作(TrueNASなど)
初期設定の手間少ない少ない〜中程度多い(OSのインストールから)
データ保護の仕組みRAID中心RAID+Btrfs/ZFSのスナップショットZFSのスナップショットと整合性チェック
スマホ写真の自動バックアップ製品による専用アプリがそろっている別途アプリを入れて構築
外出先からのアクセスメーカーの中継サービスメーカーの中継サービス、VPNVPNを自分で用意
拡張性(ベイ数、NIC、PCIe)限られるモデルによって幅広い部品次第で自由
故障したときの対応メーカー修理・保守契約メーカー修理自分で部品を特定して交換
ソフトウェアの更新メーカーが提供(期間に限りあり)メーカーが提供(期間に限りあり)OSのプロジェクトが提供
向く人設定に時間をかけたくない、日本語の窓口が必要1台で多くの用途をこなしたい構成を理解して自分で直せる

判断の順番は、まず「壊れたときに誰が直すか」です。自分がいないと直せない構成を家族や職場に残すと、故障した日にデータへ誰も手が届きません。自分で直せないなら国内メーカーか専業メーカー、自分で直せて構成を選びたいなら自作、という順に絞り、次に用途(写真、動画、仮想マシン)で機能を比べます。

容量とRAIDの決め方:使える容量を計算する

HDDの容量表記は1TB=1,000,000,000,000バイトの10進数ですが、OSは2進数(TiB)で表示するため、8TBのHDDは約7.28TiBと表示されます。「思ったより容量が少ない」のはこの差で、故障ではありません。そのうえで、RAIDの方式によって使える容量と耐えられる故障台数が変わります。4ベイのNASに8TBのHDDを4台入れた場合の計算です。

方式使える容量(HDDの表記)OSでの表示の目安同時に壊れても耐えられる台数
RAID5 / RAIDZ124TB約21.8TiB1台
RAID6 / RAIDZ216TB約14.6TiB2台
RAID10 / ミラー×2組16TB約14.6TiB各組1台まで(最大2台)
RAID0(冗長なし)32TB約29.1TiB0台

大容量のHDDでRAID5(RAIDZ1)を避けたい理由は、故障したディスクを交換したあとの再構築にあります。再構築では残りのディスクを端から端まで読み、新しいディスクに書き込みます。例として、8TBを毎秒200MBで書き込み続けられたとしても、8,000,000MB÷200MB/s=40,000秒で、約11時間かかります。実際には利用中の読み書きと並行するので、さらに延びます。その間に2台目が壊れるとRAID5ではデータを失うため、8TB以上のHDDを使うならRAID6(RAIDZ2)か、2台ずつのミラーをおすすめします。2ベイのNASなら、2台のミラー(RAID1)が基本です。

必要な容量は、今あるデータではなく数年後の量で見積もります。例として、スマホ2台で年に写真5,000枚(1枚3MB)と動画20時間(1時間10GB)を撮る家庭なら、写真15GB+動画200GBで年に約215GB増えます。5年で約1.1TBになり、パソコンのバックアップや保存しておく世代の分を足すと、使える容量で4TB程度が1つの目安になります。数字は家庭ごとに違うので、スマホの写真アプリに表示される現在の使用量から逆算するのが確実です。

RAIDはバックアップではありません。RAIDが守るのはディスクの故障だけで、誤って消したファイル、ランサムウェアによる暗号化、NAS本体の故障や盗難、火災や水害からは守れません。削除やランサムウェアにはスナップショットが、本体ごと失う事態には別の場所へのバックアップが必要です。

後からディスクを足す計画があるなら、拡張の方式も確認します。Synologyの独自方式(SHR)は容量の違うディスクを混ぜて使いやすく、執筆時点のTrueNASではRAIDZに1台ずつディスクを追加して広げる機能が使えます。ミラーはディスクを2台ずつ足していく形です。

HDDとSSDの選び方:CMRとSMR、NAS向けのモデル

HDDの記録方式には、トラックを重ならないように書くCMR(従来型)と、瓦のように一部を重ねて密度を上げるSMR(瓦記録)があります。SMRは書き換えのたびに隣のトラックまで書き直す必要があり、RAIDの再構築やZFSの再同期のように大量の書き込みが続く処理で極端に遅くなります。NASにはCMRのHDDを選んでください。同じブランド名でもモデルによって記録方式が違う例があり(WD Redの無印がSMR、WD Red PlusがCMRなど)、仕様表の記録方式の欄で確かめる必要があります。

NAS向けとして売られているHDDには、24時間の連続稼働と、複数台を並べたときの振動を前提にした設計に加えて、読み取りエラー時の挙動にも違いがあります。デスクトップ向けのHDDは、読めないセクタを長時間かけて読み直そうとしますが、その間RAIDの側からは応答がないように見え、ディスクごと故障扱いにされることがあります。NAS向けのHDDはエラーからの回復を短時間で打ち切り、判断をRAID側に任せる設定になっています。データセンター向けのHDDも使えますが、動作音と発熱が大きいので、リビングや寝室に置くなら避けます。

SSDは、動作音がなく消費電力も小さいので、容量が数TBで足りるならSSDだけのNASも選択肢になります。ただし容量あたりの価格はHDDより高く、写真や動画をため込む用途には向きません。SSDをHDDの読み書きのキャッシュに使う機能は、多人数が同じファイルを何度も読む職場では効きますが、家庭の使い方では体感できる差が出にくく、書き込みキャッシュは2台のミラーで組まないと、SSDの故障がデータの損失につながります。仮想マシンやコンテナを置くなら、キャッシュではなくSSDだけの領域を別に作る方が効果がはっきりします。

ネットワーク・電気代・置き場所

1GbE(1ギガビットのLAN)で転送できるのは、理論値で毎秒125MBです。1台のHDDでも大きなファイルの連続読み出しはこれを上回るので、動画の編集や大量の写真の取り込みをするなら、2.5GbE以上のNASと、同じ速度に対応したスイッチ、パソコン側のLANアダプタをそろえると待ち時間が目に見えて減ります。どれか1つでも1GbEだと、そこが上限になります。

電気代は、平均の消費電力から計算できます。例として、平均30Wで24時間365日動かすと、30W×8,760時間=262.8kWhで、1kWhあたり31円で計算すると年に約8,100円です。HDDの台数が増えるほど、また常時アクセスがあるほど消費電力は上がるので、製品の仕様にある「アクセス時」と「HDD休止時」の値の間で見積もります。

置き場所は、風通しと音で決めます。閉じた収納の中に置くと熱がこもってHDDの寿命を縮め、寝室ではシーク音や冷却ファンの音が気になります。停電や落雷への備えとして、NASはUPS(無停電電源装置)とUSBで連携させ、電池が減ったら自動でシャットダウンする設定にしておくと、書き込み途中の電源断によるファイルシステムの破損を防げます。主要なNASのOSとTrueNASは、この連携に対応しています。

バックアップとセキュリティ:スナップショットと外に出さない管理画面

NASの中のデータを守る手段は3段階あります。1つ目はRAIDで、ディスクの故障に備えます。2つ目はスナップショットで、ファイルを誤って消したり、ランサムウェアに暗号化されたりしたときに、数時間前や前日の状態に戻せます。3つ目は別の場所へのバックアップで、NASごと失ったときの最後の手段です。3-2-1ルール(データを3つ持ち、2種類の媒体に分け、1つを別の場所に置く)を満たすには、USBの外付けHDDを定期的に交換して別の場所に保管する、実家などに2台目のNASを置いて同期する、クラウドのバックアップ先に送る、のいずれかを加えます。

インターネットに管理画面を公開したNASは、ランサムウェアの標的になってきました。QNAP、Synology、ASUSTORなどの製品を狙った攻撃が過去に報告されていて、NASがルーターのUPnPで自動的にポートを開けていたことが、管理画面が外から見えてしまう原因になった例もあります。NAS側のUPnPによるポート開放は無効にし、外出先からの利用はTailscaleなどのリモート接続か、メーカーの中継サービスに限ります。主要なNASにはTailscaleのパッケージが用意されています(対応機種は執筆時点の公式情報で確認してください)。

もう1つの確認項目が、OSの更新が提供される期間です。メーカー製のNASは、発売から年数が経つとOSの更新が止まり、脆弱性が見つかっても修正されなくなります。購入前にメーカーのサポート終了製品の一覧を見て、同じシリーズの旧モデルが何年で更新を終えているかを確かめると、そのモデルを使える期間の見当がつきます。

用途別のおすすめNAS構成

ここまでの基準を、よくある4つの用途に当てはめます。

用途おすすめの構成理由
家族の写真とスマホのバックアップNAS専業メーカーの2ベイ+同じ容量のCMRのHDD2台でミラー、外付けHDDかクラウドへ週1回のバックアップ写真の自動アップロードのアプリがそろい、ミラーは構成が単純で交換も簡単
小規模オフィス(5〜20人)のファイルサーバー国内メーカーの法人向けモデル(保守契約付き)か、専業メーカーの4ベイでRAID6、スナップショットと別拠点へのバックアップ担当者が不在でもメーカーの窓口に頼れ、2台同時の故障にも耐える
ホームラボ(仮想マシン、コンテナ、大量のデータ)自作のTrueNASで、HDDのプール(RAIDZ2)とSSDのプールを分けるZFSのスナップショットとレプリケーション、部品の自由度を活かせる
動画の配信(JellyfinやPlex)Intelの内蔵GPUを持つx86のNAS、またはミニPC+NASARMのNASではトランスコードの性能が足りないことが多い

ひとり情シスの職場で自作NASを選ぶのはおすすめしません。担当者が休んだり異動したりしたときに、構成を理解して復旧できる人がいなくなるためです。職場ではメーカー製を選び、自作の経験はホームラボで積む、という分け方が現実的です。動画配信のサーバー側の設定はJellyfinで自宅メディアサーバーを構築するガイドを参照してください。

購入前には、次の順で確認していくと選び直しが減ります。

  1. 保存するデータの種類と、5年後の容量(上の計算式で見積もる)
  2. 故障したときに誰が直すか(自分か、メーカーか、保守業者か)
  3. ベイ数とRAIDの方式(8TB以上ならRAID6かミラー)
  4. HDDの記録方式(CMR)と、メーカーの互換性リスト
  5. OSの更新期間と、同じシリーズの旧モデルのサポート終了時期
  6. NASの外にもう1つ置くバックアップ先

よくある質問

NASはどこのメーカーがいいですか?

誰が管理するかで選ぶのが確実です。日本語の窓口と保守契約が必要な職場なら国内メーカー、写真の自動バックアップや動画配信まで1台でこなしたいならNAS専業メーカー、構成を理解して自分で直せるなら自作が向きます。どのメーカーでも、HDDの互換性リストとOSの更新期間は購入前に確認してください。

NASはQNAPとSynologyのどちらがいいですか?

Synologyは管理画面と写真・バックアップ用のアプリがまとまっていて、初めてのNASでも迷いにくいのが強みです。QNAPはLANの速度やPCIeの拡張などハードウェアの選択肢が広く、ZFSを使うOSを選べるモデルもあります。どちらを選んでも、管理画面をインターネットに公開しないことと、OSの更新を続けることが前提です。

NASのHDDは何年くらい使えますか?

決まった年数はなく、使い方と個体差で大きく変わります。目安として、NAS向けHDDのメーカー保証期間(製品により3年や5年など)を1つの区切りにし、SMARTの代替処理済みセクタ数や保留中のセクタ数が増え始めたら交換を準備します。RAIDやミラーなら1台ずつ交換できるので、全台を同時に替える必要はありません。

NASはSSDとHDDどっちがいい?

写真や動画をため込むなら、容量あたりの価格が安いHDDです。数TBで足り、静かさと省電力を重視するならSSDだけのNASも選べます。仮想マシンやコンテナを置く場合は、HDDのNASにSSDの領域を別に作るのが効果的で、SSDをHDDのキャッシュにする使い方は家庭では差が出にくいことが多いです。

まとめ

おすすめのNASは、保存するデータと、壊れたときに誰が直すかで決まります。容量はRAIDの方式ごとの計算で数年後の量から見積もり、8TB以上のHDDならRAID6かミラー、HDDはCMRのNAS向けモデルを選びます。RAIDとは別にスナップショットとNASの外のバックアップを用意し、管理画面をインターネットに出さなければ、どの種類を選んでも大きな失敗は避けられます。

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公開 2026.09.24
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