Slack・Teams・Chatworkの選び方:情シス視点の比較(管理・セキュリティ・連携)
Slack・Teams・Chatworkを、アカウント管理、社外とのつながり方、ファイルの保存先と保存期間、監査、連携の観点で比較し、選び方と併用・乗り換えのルールを整理します。
Slack・Teams・Chatworkを比較するときに情シスが見るべきなのは、機能の数より管理とセキュリティの違いです。ビジネスチャットとは、チャンネル単位の会話と通知で業務連絡を行うツールです。3つとも「話す」機能に大差はなく、差が出るのは、アカウントを誰が管理するか、社外の人とどうつながるか、データをどこに置いて何年残すか、という運用の部分です。
ここでは料金表や画面の好みではなく、情シスの管理項目でSlack・Microsoft Teams・Chatworkを比べ、どの条件でどれを選ぶか、併用するときに何を決めるかを整理します。プランごとの機能は改定が多いため、表の内容は執筆時点のもので、契約前に各社の公式の機能比較で確認してください。
この記事でわかること
- 3つのツールの立ち位置と、情シス視点の比較表(ID管理・社外連携・データ保存・監査・連携)
- Teamsのファイルの保存先と、退職者のOneDriveに起因するリンク切れ
- 社内・社外の相手や既存の契約から選ぶ判断基準
- 併用するときに決めておくルールと、乗り換え時にデータを持ち出す際の注意点
3つのツールの立ち位置
Slackは、チャンネルを中心に会話を組み立てるチャットツールで、外部サービスとの連携アプリとワークフローの自動化が充実しています。別の会社とチャンネルを共有する「Slack Connect」があり、取引先ともSlack上でやり取りできます。
Microsoft Teamsは、Microsoft 365の一部として提供されるコラボレーションツールで、チャット・会議・ファイル共有が一体になっています。アカウントはEntra IDそのもので、ファイルはSharePointとOneDriveに保存されます。最大の特徴は、Microsoft 365を契約している会社なら、追加のアカウント管理なしに使い始められることです。
Chatworkは、国内の企業、とくに中小企業や士業の事務所で使われることの多いチャットツールです。相手の会社がどのプランを契約しているかに関係なく、利用者どうしが「コンタクト」を追加して直接つながれるため、社外の人との連絡に強みがあります。
情シス視点で見るSlack・Teams・Chatworkの比較表
| 観点(執筆時点) | Slack | Microsoft Teams | Chatwork |
|---|---|---|---|
| アカウント | Slack独自。SAMLのSSOとSCIMは上位プラン | Entra IDのアカウントそのもの | Chatwork独自。組織としての管理機能は上位プラン |
| 社外とのやり取り | Slack Connect(組織どうしでチャンネルを共有) | 外部アクセス、ゲストアクセス、共有チャネル | コンタクトを追加して個人どうしで直接つながる |
| ファイルの保存先 | Slackのストレージ | チャネルはチームのSharePoint、チャットは送信者のOneDrive | Chatworkのストレージ |
| 保存期間 | 無料プランは古い履歴が削除される。有料プランで保持期間を設定 | Purviewの保持ポリシー(範囲はライセンス次第) | プランによって異なる |
| 監査・調査 | 詳細な監査ログや全データのエクスポートは上位プラン | Purviewの監査ログと電子情報開示 | 上位プランの管理機能 |
| スマホの管理 | 最上位プランでモバイル管理製品との連携 | Intuneのアプリ保護ポリシー | 公式の機能表で確認 |
| 自動化・連携 | アプリ、ワークフロー、API、Webhook | Power Automate、ワークフロー、Graph API | API、Webhook |
| 費用の考え方 | ユーザー単位。一定期間使っていないメンバーの料金を精算する仕組みあり | Microsoft 365の契約に含まれる場合と、別購入の場合がある | ユーザー単位 |
アカウントの行が最も重要です。TeamsはEntra IDのアカウントで動くため、退職時にEntra IDでアカウントを止めれば、条件付きアクセスや多要素認証の設定もそのまま効きます。これに対してSlackとChatworkはそれぞれ独自のアカウントを持つため、SSOとSCIMが使えるプランでない限り、退職時にアカウントを別途止める手順が必要です。SSOとSCIMの確認項目はSaaSのSSO/SCIM対応チェックリストにまとめています。
Slackの無料プランは、執筆時点では1年より古いメッセージとファイルが削除される仕様です。「無料で始めて、あとで有料にすればいい」と考えていると、切り替えた時点で古い議論が残っていないことがあります。業務の記録として残す必要があるなら、最初から有料プランで保持期間を決めて使い始めるか、記録すべき内容を別のシステムに残す運用にしてください。
Teamsのファイルはどこにあるか
Teamsを選ぶ場合に必ず理解しておきたいのが、ファイルの保存先です。チームのチャネルに投稿したファイルは、そのチームに対応するSharePointサイトのライブラリに保存され、権限はチームのメンバーシップで決まります。一方、1対1やグループのチャットで送ったファイルは、送った人のOneDriveに保存され、チャットの参加者に共有されます。
この違いが問題になるのは退職者が出たときです。チャットで共有されたファイルの実体は退職者のOneDriveにあるため、アカウントを削除して、削除済みユーザーのOneDriveの保持期間(既定は30日)が過ぎると、チャットに残ったリンクは開けなくなります。業務で使い続けるファイルはチャットではなくチャネルに置く、退職処理の前にOneDriveの中身を後任者に引き継ぐ、の2点をルールにしておくと、「チャットのファイルが消えた」という問い合わせを防げます。
Teamsの外部アクセス(他社のMicrosoft 365ユーザーとのチャット)は、既定の設定のままだと、どの組織のユーザーともチャットできる状態になっていることがあります。取引先とのやり取りを許可する場合は、許可するドメインを列挙する方式にし、ゲストアクセスや共有チャネルと合わせて、社外の人がどこまで見られるかをTeams管理センターで確認してください。設定の名前や既定値は変わることがあるため、導入時に実際の画面で確かめます。
選び方の判断基準
どれを選ぶかは、機能よりも「いまの契約」と「話す相手」でほぼ決まります。
- 全社でMicrosoft 365を契約し、Teamsが含まれているなら、社内の標準はTeamsにします。ID、条件付きアクセス、ファイル、保持ポリシーが1か所で管理でき、追加の費用も小さく済みます。Google Workspaceとの比較からMicrosoft 365を選ぶ場合の観点は、Google WorkspaceとMicrosoft 365の比較で整理しています
- 開発やSaaSの利用が中心で、外部サービスとの連携や、取引先の開発チームとのチャンネル共有が多いならSlackが向いています。ただし、SSOとSCIMが使える上位プランを前提に費用を見積もります
- 顧客や取引先に中小企業や士業、個人事業主が多く、相手がすでにChatworkを使っているなら、社外との連絡用にChatworkを用意する価値があります。相手に新しいツールを入れてもらう負担がないことが最大の理由です
- インターネット上のSaaSにデータを置けない事情がある場合は、どれも選ばずに、自社で運用するチャット(Mattermostのセルフホストなど)を検討します
併用するときに決めること
実際には「社内はTeams、社外の取引先とはChatwork」「開発部門だけSlack」のような併用が珍しくありません。併用自体は問題ありませんが、ルールがないと情報の置き場所が分散し、退職時の処理が漏れます。最低限、次の4つを決めておきます。
- どの相手とどのツールで話すか(社内・特定の取引先・開発パートナーなど)
- 社外向けのツールに書いてよい情報の範囲(顧客情報や見積もり金額を書くか)
- 退職・異動時に止めるアカウントの一覧と、その担当者
- 業務の記録として残すべき内容を、どのシステムに転記するか
複数のツールの通知を1つにまとめたい場合、Power AutomateやAPIでメッセージを転送する方法もあります。ただし、社外向けのツールの内容を社内のツールに自動転送すると、転送先の保存期間や権限で管理されることになるため、転送する範囲はチャンネル単位で決めてください。
乗り換えるときの注意点
別のツールに乗り換える場合、いちばん時間がかかるのは過去のメッセージの扱いです。Slackでは、エクスポートできる範囲がプランによって異なり、非公開チャンネルやダイレクトメッセージまで含めた全データのエクスポートは上位プランの機能です(執筆時点)。Teamsへの取り込みには、Graph APIの移行用機能で投稿日時を保ったままメッセージを書き込む方法がありますが、専用のツールや開発の手間が必要です。
現実的なのは、過去のメッセージは旧ツールを読み取り専用で一定期間残すか、エクスポートしたデータをアーカイブとして保管し、新しいツールには進行中の案件だけを移す方法です。あわせて、旧ツールに作られていたBotやWebhook、ワークフローを洗い出し、新しいツールで作り直す一覧を作ります。この一覧がないと、切り替えた翌日に監視アラートや申請の通知が届かなくなります。
よくある質問
Slackの欠点は何ですか?
アカウントがSlack独自なので、SSOやSCIMで退職時に自動停止するには上位プランが必要で、全員を上位プランにすると費用が膨らみます。無料プランは古い履歴が削除されるため、記録を残す用途には向きません。すでにMicrosoft 365を契約している会社では、Teamsとの二重投資になりやすい点も欠点です。
SlackとTeamsのどちらがいいですか?
全社でMicrosoft 365を契約しているなら、ID管理・ファイル・保持ポリシーが一体になるTeamsが第一候補です。外部サービスとの連携や、取引先とのチャンネル共有を重視する開発中心の組織ならSlackが向いています。どちらを選んでも、退職時にアカウントを止める手順は先に決めておきます。
Slackとチャットワークのどちらがいいですか?
社外の中小企業や士業とのやり取りが中心で、相手がすでにChatworkを使っているならChatworkが便利です。社内の議論や外部サービスとの連携、開発チームでの利用が中心ならSlackが向いています。社内と社外で分けて併用する場合は、それぞれに書いてよい情報の範囲を決めておきます。
SlackとTeamsのシェアは?
調査会社ごとに対象や集計方法が異なり、単一の公式な数字はありません。自社にとって重要なのは全体のシェアより、取引先や協力会社が何を使っているかと、自社がすでに契約しているサービスです。数字を比較するより、主要な取引先の利用状況を確認するほうが判断に役立ちます。
まとめ
Slack・Teams・Chatworkの違いは、話す機能より、アカウントの管理、社外とのつながり方、データの置き場所と保存期間に出ます。社内の標準は、Microsoft 365を契約しているならTeamsにし、社外とのやり取りには相手の利用状況に合わせてChatworkやSlack Connectを使い分けます。併用する場合は、話す相手とツールの対応、書いてよい情報、退職時に止めるアカウントを先に決めてください。
次に読む
- SaaSのSSO/SCIM対応チェックリスト:SlackやChatworkのアカウントを退職時に確実に止める
- Google WorkspaceとMicrosoft 365の比較:チャットの前に決める、グループウェアの選び方
- Mattermostで社内チャットをセルフホストする:SaaSにデータを置けない場合の選択肢