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#saas·FEATURE·2026.09.24 09:39 · 14 min read

Microsoft 365 Copilot導入前の準備:権限の棚卸しと情報漏えいを防ぐ設定

Microsoft 365 Copilotは利用者が見られる情報をすべて参照します。EEEU・組織リンク・公開チームの棚卸し、SharePoint管理シェルでのレポート、封じ込め、パイロットの手順を整理します。

Microsoft 365 Copilot(旧称Copilot for Microsoft 365)とは、Microsoft 365のアプリで社内のメールやファイルを根拠に回答するAIアシスタントです。WordやTeams、Outlookなどに組み込まれ、利用者がすでにアクセスできる情報だけを使う設計ですが、それは裏を返すと「誰でも見られる状態で放置されていた資料」が、自然文の質問ひとつで見つかるようになるということです。

導入前の準備の中心は、AIの設定ではなくMicrosoft 365の権限の棚卸しです。ここでは、Copilotが参照する範囲の仕組み、過剰共有を見つけるレポートの作り方(SharePoint Online管理シェルのコマンド名とパラメーターは、執筆時点の最新モジュールで存在を確認済み)、直しきれないサイトの一時的な封じ込め、秘密度ラベルと監査、パイロットの進め方を順に整理します。

この記事でわかること

  • Microsoft 365 CopilotとCopilot Chatの違いと、Copilotが参照する範囲の仕組み
  • 過剰共有の3大要因(Everyone except external users、組織全体の共有リンク、公開チーム)
  • SharePoint管理シェルとGraph PowerShellで、過剰共有のレポートを作る手順
  • 制限付きコンテンツ検出などの一時的な封じ込めと、その副作用
  • 秘密度ラベル・DLP・監査の準備と、テスト用の質問を使ったパイロットの進め方

Microsoft 365 Copilot(旧Copilot for Microsoft 365)とCopilot Chatの違い

似た名前のサービスが2つあり、準備の範囲が違うので最初に区別します。

観点(執筆時点)Microsoft 365 Copilot ChatMicrosoft 365 Copilot
ライセンスEntra IDの職場アカウントで追加費用なしに使える対象プランに上乗せする有償の追加ライセンス
主な根拠Webの情報と、利用者が会話に添付・指定したファイル利用者がアクセスできるメール・予定・Teamsのチャット・SharePointとOneDriveのファイル
使える場所ブラウザー、Teams、Microsoft 365アプリ内のチャットWord・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsなどのアプリ内に統合
権限棚卸しの必要度低い(既定では社内データを横断検索しない。従量課金のエージェントを使う場合は別途確認)高い(社内データを横断して参照する)

Microsoft 365 Copilotの契約前提として、Business Basic・Standard・Premium、E3、E5などの対象プランが必要です(プランごとの違いはMicrosoft 365のプラン比較を参照)。プロンプトと応答、参照した組織のデータを基盤モデルの学習に使わないことは、Microsoftが執筆時点の公式ドキュメントで説明しています。つまり外部への流出より、社内での「見えすぎ」が主なリスクです。

Copilotが参照する範囲:見えるものが探せるものになる

Copilotは質問を受けると、Microsoft Graphを通じて、質問した本人が少なくとも閲覧権限を持つメールやファイルを検索し、その内容を根拠に回答を作ります。本人に権限のない情報は回答に使われません。新たな権限を作るわけではないのに問題になるのは、これまで「場所を知らなければたどり着けなかった」資料が、「人事評価の資料をまとめて」のような質問で横断的に見つかるようになるからです。

社内の過剰共有は、多くの場合次の3つから生まれます。

  1. Everyone except external users(外部ユーザーを除く全社員を表す特別なグループ。以下EEEU)が、サイト・ライブラリ・フォルダーの権限に付いている
  2. 組織内の全員が開ける共有リンク(People in your organizationリンク)が作られ、社内で転送されている
  3. プライバシー設定が「パブリック」のMicrosoft 365グループやチームに、部署限りの資料が置かれている

1つ目は、サイトを作ったときや、共有の手間を省くために「全員」を選んだときに付きます。3つ目のパブリックなチームは、メンバーでない社員もサイトの中身を閲覧できるため、Copilotの回答にもそのまま現れます。いずれも「誰も悪用していないから問題になっていなかった」状態で、Copilotの導入でその前提が崩れます。

過剰共有を見つける:レポートの作り方

棚卸しは、テナントの共有設定、全員に開いたサイト、組織全体の共有リンク、パブリックなグループの4点から始めます。SharePointの権限レポートはSharePoint Online管理シェル(Microsoft.Online.SharePoint.PowerShell)で作成でき、以下のコマンドは執筆時点のバージョン16.0.27612.12000にあることを確認しています。データアクセスガバナンスのレポートにはSharePoint Advanced Managementの機能が必要で、執筆時点ではMicrosoft 365 Copilotのライセンスがあれば利用できると案内されています。

SharePoint Online 管理シェル
Connect-SPOService -Url https://example-admin.sharepoint.com
Get-SPOTenant | Select-Object SharingCapability, DefaultSharingLinkType, DefaultLinkPermission

# EEEU(外部ユーザーを除く全社員)に開いているサイトのレポート(-Name は必須)
Start-SPODataAccessGovernanceInsight -ReportEntity EveryoneExceptExternalUsersAtSite -Workload SharePoint -ReportType Snapshot -Name "EEEU棚卸し"

# 組織内の全員が開ける共有リンクのレポート
Start-SPODataAccessGovernanceInsight -ReportEntity SharingLinks_PeopleInYourOrg -Workload SharePoint -ReportType Snapshot

# 作成状況の確認と、CSVのダウンロード
Get-SPODataAccessGovernanceInsight -ReportEntity EveryoneExceptExternalUsersAtSite
Export-SPODataAccessGovernanceInsight -ReportID <上で表示されたReportID> -DownloadPath C:\reports

-ReportEntity には、ほかに SharingLinks_Anyone(匿名リンク)、SharingLinks_Guests(ゲストとの共有)、EveryoneExceptExternalUsersForItems(ファイル・フォルダー単位で全員に開いたもの)なども指定できます。-Workload を OneDriveForBusiness にすると、個人のOneDriveからの共有を対象にできます。レポートの作成には時間がかかるため、最初は Snapshot(現時点の状態)で全体を把握し、定期的な監視には RecentActivity(最近の共有の変化)を使う、という使い分けが効率的です。

パブリックなグループは、Graph PowerShellで一覧にできます。

PowerShell 7
Connect-MgGraph -Scopes "Group.Read.All" -NoWelcome
Get-MgGroup -All -Property Id, DisplayName, Visibility, GroupTypes |
    Where-Object { $_.GroupTypes -contains 'Unified' -and $_.Visibility -eq 'Public' } |
    Select-Object DisplayName, Id

Graph PowerShellのインストールと接続の方法はMicrosoft Graph PowerShellの手順にまとめています。

見つけた過剰共有の直し方

レポートの結果には優先順位を付けます。最優先は、人事・経理・経営会議・法務など、機微な情報が集まるサイトで全員に開いているものです。これらはサイトの所有者と相談して、EEEUを権限から外すか、パブリックなチームをプライベートに変更します。件数が多い場合は、サイトの所有者に見直しを依頼する「サイトのアクセスレビュー」(Start-SPOSiteReview -ReportID <レポートID> -SiteID <サイトID> -Comment "...")を使うと、情シスが1件ずつ判断しなくて済みます。

同時に、これ以上増やさないための既定値を変えます。

SharePoint Online 管理シェル
Set-SPOTenant -DefaultSharingLinkType Direct -DefaultLinkPermission View
Set-SPOTenant -ShowEveryoneExceptExternalUsersClaim $false

DefaultSharingLinkType に指定できる値は None・Direct・Internal・AnonymousAccess で、Direct が特定のユーザーだけに共有するリンク、Internal が組織内の全員が開けるリンクに当たります。1行目は、共有ダイアログを開いたときの既定を「特定のユーザーに、閲覧のみ」で共有する形にする設定です。2行目は、権限を付けるときのユーザー選択の候補にEEEUを表示しないようにします。

既定値の変更は、これから作られる共有リンクにしか効きません。すでに作られた組織内向けのリンクや、付与済みのEEEUの権限はそのまま残ります。既定値を変えて安心せず、前のセクションのレポートで既存の分を洗い出して、サイトの所有者と一緒に消していく作業が別に必要です。

直しきれないサイトの一時的な封じ込め

全社のサイトを導入日までに直しきれないことは珍しくありません。その場合は、権限を変えずにCopilotや全社検索に出さないようにする仕組みを、期限付きで使います。

方法(執筆時点)設定効果副作用・注意
制限付きコンテンツ検出Set-SPOSite -Identity <サイトURL> -RestrictContentOrgWideSearch $trueそのサイトの内容を全社検索とCopilotの回答に出さない権限はそのままなので、URLを知っている人は開ける
制限付きアクセス制御Set-SPOTenant -EnableRestrictedAccessControl $true の後、Set-SPOSite -Identity <サイトURL> -RestrictedAccessControl $true -RestrictedAccessControlGroups <グループID>指定したグループのメンバー以外は、権限があってもサイトを開けない正しい利用者がグループから漏れていると業務が止まる
制限付きSharePoint検索Set-SPOTenantRestrictedSearchMode -Mode Enabled と Add-SPOTenantRestrictedSearchAllowedList -SitesList <URLの一覧>全社検索とCopilotの対象を、許可したサイトに絞る許可リストの外にある正当な資料も探せなくなる。登録できるサイト数に上限がある

おすすめは、機微なサイトに絞って制限付きコンテンツ検出をかけ、権限の見直しが終わったサイトから順に外していく方法です。制限付きSharePoint検索はテナント全体の検索体験を狭めるため、パイロット期間の一時的な手段と考えます。どの方法を使う場合も、「いつまでに権限を直して解除するか」を台帳に書いておかないと、封じ込めたまま忘れられます。

秘密度ラベル・DLP・監査の準備

権限の棚卸しと並行して、情報そのものに印を付ける準備を進めます。Microsoft Purviewの秘密度ラベルで暗号化を設定した文書は、利用者に閲覧と内容の抽出を許す権限がない限り、Copilotの回答に使われません(執筆時点の仕様)。「社外秘」「人事限り」のようなラベルを作り、機微なサイトの既定ラベルにしておくと、権限設定の漏れがあっても被害を小さくできます。

さらに、DLP(データ損失防止)ポリシーの対象としてMicrosoft 365 Copilotを選び、特定のラベルが付いたファイルやメールをCopilotの処理から除外する設定も用意されています(執筆時点)。ラベルとDLPで何ができるかはプランによって違うため、使いたい機能とライセンスを先に照らし合わせてください。

利用者とCopilotのやり取りは、Microsoft Purviewの監査ログに記録され、保持ポリシーの対象にもなります(執筆時点)。導入前に、監査ログを誰が見られるか、Copilotのやり取りを何日保存するかを、社内の生成AI利用ガイドラインと一緒に決めておきます。利用者に「やり取りが記録される」ことを事前に伝えておかないと、後から監査ログを使ったときに不信感を招きます。ガイドラインの作り方は生成AIの社内利用ガイドラインで整理しています。

パイロットの進め方:テスト用の質問で確かめる

ライセンスを全員に配る前に、情シスと少人数の部署でパイロットを行います。パイロットで最も効果があるのは、「見えてはいけないものが見えないか」を意図的に確かめる作業です。一般社員と同じ権限のテスト用アカウントにCopilotのライセンスを割り当て、次のような質問を投げて、回答の根拠に出てくるファイルを記録します。

  • 「社員の給与や賞与が書かれた資料を一覧にして」
  • 「人事評価や異動の予定について書かれたファイルは?」
  • 「取締役会の議事録を要約して」
  • 「パスワードやアカウント情報が書かれた文書を探して」
  • 「退職予定者の一覧はある?」

回答に部署限りのはずのファイルが出てきたら、それは棚卸しの漏れです。ファイルの場所と、なぜ見えたのか(全員権限、組織リンク、パブリックなチーム)を記録して、所有者と直します。質問は部署ごとに機微な言葉を足して作り、権限を直したあとに同じ質問をもう一度投げて、出てこなくなったことを確認します。

パイロットの期間中に、利用者向けのルール(Copilotの回答を社外に出す前の確認、機微な情報を入力しない場面)と、問い合わせの窓口も決めておきます。本番展開は、棚卸しで見つかった優先度の高い過剰共有を直し終えてから、部署単位で広げます。

導入前チェックリスト

項目確認方法導入の目安
テナントの共有既定値Get-SPOTenant の DefaultSharingLinkTypeDirect(特定のユーザー)になっている
全員に開いたサイトEEEUのデータアクセスガバナンスレポート機微なサイトで0件、その他は所有者の確認済み
組織全体の共有リンクSharingLinks_PeopleInYourOrgのレポート機微なサイトのリンクを削除済み
パブリックなチームGraph PowerShellでVisibilityがPublicのグループ部署限りの資料を置くチームはプライベート
秘密度ラベルPurviewのラベル設定「社外秘」相当のラベルが機微なサイトに適用済み
監査と保持監査ログの検索と保持ポリシーCopilotのやり取りの保存期間が決まっている
パイロットの結果テスト用の質問の記録機微なファイルが回答に出ないことを再確認済み

よくある質問

Copilot for Microsoft 365は有料ですか?

社内のメールやファイルを根拠に回答するMicrosoft 365 Copilotは、対象プランに上乗せする有償の追加ライセンスです。Entra IDの職場アカウントで使えるCopilot Chatは追加費用なしで使えますが、既定では社内データの横断検索はできません。金額は改定されることがあるため、公式サイトか販売代理店で確認してください。

Copilot for Microsoft 365は安全ですか?

利用者が閲覧できる範囲の情報しか使わず、プロンプトや応答を基盤モデルの学習に使わないとMicrosoftは説明しています(執筆時点)。一方で、社内で見えすぎている資料はそのまま回答に出るため、安全性は自社の権限設定に左右されます。導入前の権限の棚卸しと、パイロットでの確認が前提です。

マイクロソフト365 Copilotは必要ですか?

メールや会議、文書作成に多くの時間を使う職種では効果が出やすい一方、定型の入力作業が中心の職種では使う場面が限られます。全員に配る前に、パイロットで利用頻度と用途を確認し、使われている部署から広げるのが現実的です。使われないライセンスは、利用状況のレポートで見直します。

Copilot for Microsoft 365とMicrosoft 365 Copilotの違いは?

同じ製品で、Copilot for Microsoft 365は以前の名称です。現在はMicrosoft 365 Copilotと呼ばれ、追加費用なしで使えるチャット機能はMicrosoft 365 Copilot Chatという別の名前になっています。古い資料や見積もりでは旧名で書かれていることがあるため、品目を確認するときは両方の名前で照合します。

まとめ

Microsoft 365 Copilotの導入準備は、利用者が見られる範囲をCopilotがそのまま使うという前提に立ち、過剰共有の棚卸しから始めます。EEEU・組織リンク・パブリックなチームをレポートで洗い出し、共有の既定値を「特定のユーザー」に変え、直しきれないサイトは期限付きで検索から外します。秘密度ラベルと監査の保存期間を決め、テスト用の質問で見えてはいけない資料が出ないことを確かめてから展開してください。

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公開 2026.09.24
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